光学設計ノーツ 20(ver.1.0)
ペッツバール和について
これまでに触れさせていただいた正弦条件同様、光学設計において重要な指針を与
えるペッツバール和について、今回は解説させていただく。主にその導出についてではあ
るが、導出を知る事はペッツバール和をより適切に利用できることに繋がる。
1. 導出
図1からアッベの不変量1)
sr
n
sr
n1111
r
nn
s
n
s
n (1)
また図より
rstrst
, (2)
なので、(1)式は
r
nn
rt
n
rt
n

r
nn
rtrt
nrtnrntn
この式を単純に整理していくと
r
nn
t
n
t
n (3)
となる。この式をスネルの式と呼ぶ。
さて、 2においては、物体面上(より一般的に曲面と考える。)の Aに対応するその結
像を点 A’とする。同様に光軸上の物点、像点が Cを中心に回転した場合を考え、この時の
回転移動した物点と像点を B,B’とする(図には物界における A,B のみ記してある)この時、
線分 AB の像が A’Bと成る訳であるから光軸方向の長さである、これら線分の長さの比△t’/
tは縦倍率となる。従って近軸理論の縦倍率の公式 2)より、横倍率を
m
として
2
2
t
t
n
n
m
n
n
t
t (4)
ここに
t
t
y
y
m
(4.5)
である。さて、図 2において
2
1
2
2
22 1
R
y
RRyRR
従って近似式、

m
m 11 より、
R
y
R
y
RR 2
2
1
2
2
2
ここで、曲率として 1/R=ρとおけば
2
2y
(5)
同様に像界でも同様の量、同様の関係が成り立ち
2
2y
(6)
Cを中心にした球についても同様に考えて、
(物界では
t
は負、
R
は正であることに注意)
lt
2
2
21
2
1
22 y
tt
y
y
(7)
同様に
2
1
2
1y
t
t
(8)
ここで、(7)(8)式を(4)式に代入すると
2
2
2
1
2
1
1
2
1
t
t
n
n
y
t
y
t
(4.5)式より
n
n
t
t
1
1
t
n
n
t
n
n
(3)式、スネルの式より
nn
nnnn
(9)
光学系に多くの境界面が存在する場合には各面ごとに(9)式の関係が成り立つから
21
1
1
1
2
2
nnnn
32
2
2
2
3
3
nnnn
・・・・・・・・
kk
k
k
k
k
knnnn 1
1
1
1
となり、これらの式を加えていけば
1
11
1
k
iii
i
k
knnnn
(10)
と成る。右辺のシグマによる和をペッツバール和と呼ぶ。
2.ペッツバール和の意味
物体面が平面だとするとρ10であるから(10)式は
1
1
k
iii
i
k
knnn
(11)
ρkは像の曲率である。物体面が平面であれば像面も平面である事が理想的であるから、
のためには
0
1
1
k
iii
i
nn
(12)
が望まれる。(12)式には各面の屈折力と硝材の屈折率しか含まれていないところが重要であ
る。つまり、各面についての細かいパワー配置が保たれているとしても、硝材が異なれば
像面の曲がり方は異なる事になる。
薄肉系が配置されているとすればひとつ薄いレンズについては、それが空気中にあり、
2つの面のそれぞれのペッツバール和はφ1/nφ2/n でありこの二つの面の間隔は限りなく
0であるからこの薄肉系全体ではペッツバール和はφをその屈折力として
nnn
21
つまり
k
個の薄肉系よりなる光学系のペッツバール和に対しては像面平坦の条件は
0
k
ii
i
n
(13)
となる。非点収差が存在する場合には、メリディオナル像面もサジタル像面もペッツバー
ル和により示される像面より乖離していく事になるが、非点収差も本来は極力減少させる
べきものであり、ペッツバール和のコントロールは光学設計において重要な要素となる。
3. 参考文献
1)松居吉哉:レンズ設計法(共立出版、東京、1972) P15
2) 早水良定:光機器の光学Ⅰ(日本オプトメカトロニクス協会,1995) P16
3) 草川 徹:基礎光学(東海大学出版会、東京、1997)