光学設計ノーツ 74 (ver.1.0)
光線の構造 2
はじめに
前回に引き続き“光線の構造”について検討させて戴きたい。こうした内容は、近年,
エタンデュという用語も頻繁に用いられる照明系設計・評価の際には振り返ってみるべき
内容であり, Nonimaging Optics7) の基本と成る部分でもある。また, ここでは正弦条件以
外に触れられなかったが,光学系の収差補正上の構造的な制約を知る上でも重要となる。
1. エタンデュと正弦条件
前回の検討においては二つの光斑が共役関係に無い一般的な場合を考えているが,光
斑同
士に共役関係がある場合には,前回図 2に対して, 6前回図 3に対して図 7を入れ替え
て符号に注意して考えれば同様の導出が可能であり,
6 フェルマーの原理より考察する光路差(共役結像の場合
(10)式、一般化されたラグランジュの不変量
dSdndSdn
coscos 22
(73-10)
そのものが得られる。
7 角度の異なる光線の光路差(共役結像の場合)
(10)式から,物界と像界における輝度 B,B’についての関係,
B
n
n
B
2
2
(11)
も得られる。空気中では光線に沿った細い光束内で輝度は保存される。
こうした微小な角度に対しては前回図 3にある様な等位相面を導入して考えればメリデ
ィオナル面内で,非共役結像関係の場合を例にとれば図 8の様な模式的な図が書ける。等
位相面を介在して考えれば,各セクションの光路長を図 8にあるように置いて,この場合
(3)式より
[BB’] -(
W
x
=
z
x
[BB’]
= z
+
W
と成り
T
y
x
W
(12)
T
s
z
W
(13)
両辺引けば
y
x
s
z
(14)
と言う関係が得られる。
8 光線の構造(AA’BB’が共役関係に無い場合)
光軸方向の諸元に比べ,光源,像面積,角度
β
が十分に小さければ,メリジオナル面内で
(14)式は成立せねばならない。物界の光路長
x,y
像界の光路長
z,s
のそれぞれの差が常に
等しいことが図 8の光路長の関係が成立するために必要な条件と成る。このため,例えば
物界においては変化が無く,像界だけにおいて光斑の幅
dr
m
倍大きくなった場合,
8の像界の関係が全体的に
倍拡大されただけでは(14)式が成立せず,
d
β'が小さくなって,
(14)式の関係が保たれることになる。それは図 8で表わされる光線が,その他多くの近傍の
平行光線と,立体角を持つ発散収束光線の双方を代表するための条件であり,既述の通り
フェルマーの原理により支配される光線の構造によるものと考えられる。図 9に面同士が
共役関係にある場合を示す。
W
W
T
C#
C#’
C’
C
A
A’
B
B’
X
Y
Z
S
W
T2
T1
C#
C#’
C’
C
A
A’
B
B’
x
Y
z
s
z
9 光線の構造(AA’BB’が共役関係にある場合)
さて,(10)式におけるαは微小量である必要は無いので光源から発するあらゆる方向に
(10)式を考えることが出来るが,前回図 2にある光線構造内での立体角は微小なので,広範
囲にわたる角度範囲について照明的な量を考察する場合には積分が必要になる。
ddSnE
cos
2 (15)
この総放射空間とも考えられる量は,エタンデュétendue7-9)と呼ばれる。この量そのも
のは光束全体が光学系を通過してもやはり,保存される。従って,もし最終的に任意の受光
面積,受光角を持つ素子に光束が収まるのであれば光源のエタンデュ,受光側(或いはプロ
ジェクター等の表示ディバイス)のエタンデュを計算し集光効率を検討することが出来る
14,7)p.27。積分範囲における立体角が不変で有れば(15)式の結果は

SdSdnE
0
2cossin2
22 sinSn (16)
となる。従って,物界と像界についてはエタンデュが保存され,
2222 sinsin SnSn (17)
この(17)式は正弦条件そのものである 9)同じ光源部分から発し,いろいろな方向に進み光
学系に入射した微小光束が,共役結像系の場合それぞれ,倍率関係で決まる同じ光斑面積に
到達する,つまりコマ収差が発生していないことを表している。
3.アイコナール方程式
光線の方向を表す単位ベクトルを
,
として,方向余弦をL,M,NL’,M’,N’とし,
微小な変化 rd
dx, dy, dz
, rd
dx’, dy’, dz’
とした場合,内積を用い,前回(4)式に
於ける光路長の差を
dV
= [BB’] [AA’]とすれば,

'''''' dzNdyMdxLnNdzMdyLdxndV
(18)
と表せる。ここで(18)式を微分すれば
nN
z
V
nM
y
V
nL
x
V
,,
Nn
z
V
Mn
y
V
Ln
x
V
,, (19)
これらの式の右辺は方向余弦に屈折率の係ったものであるから
2
2
2
2
n
z
V
y
V
x
V
(20)
2
2
2
2
n
z
V
y
V
x
V
(21)
(20)式は別の表現では
2
2
grad nV (22)
である。この式はアイコナール方程式と呼ばれ,
V
Hamilton の特性関数或いは点アイコ
ナールと呼ぶ 11)grad
V
V
が一定な幾何光学的波面に直交するベクトルを表しており,
光線の方向を示す。また、(22)式は Maxwell の方程式より直接導出することも出来る 11)
4. 参考文献
1) 松居吉哉:レンズ設計法(共立出版,東京,1972,p.23.
2) M.J.Kidger:Fundamental Optical Design(SPIE Press, Bellingham,2001),p.25.
3) V.N.Mahajan:Optical Imaging And Aberrationspart
(SPIE Press,Bellingham,1998.p.6.
4) A.Walther: The Ray and Wave Theory of Lenses
(Cambridge Univercity Press,Cambridge,1995),p.21.
5) 鶴田匡夫:第4・光の鉛筆(新技術コミュニケーションズ,東京,1997,p.410.
6) W.T.Welford:Aberration Of Optical Systems (AdamHilger,
Bristol,1986),p.87.
7) W.T.WelfordR.Winston:High Collection Nonimaging Optics
(Academic Press, San Diego1989)
8) W.H. Steel,” Luminosity, Throughput, or Etendue?”,
Appl. Opt. 13, 704 (1974).
9) R.W.Boyd:Radiometry and Detection of Optical Radiation
John Wiley & Sons,New York,1983),p.89
10) 工藤恵栄,上原富美哉:基礎光学(現代工学社,東京,1995,p.53.
11) M.Born & E.Wolf : 学の原理Ⅰ,第 7版/草川徹訳(東海大学出
,2005),p.169,p.199.
12) 龍岡静夫:光工学の基礎(昭晃堂,東京,1990
13) 鶴田匡夫:第 10・光の鉛筆 (新技術コミュニケーションズ,東京,2014
14) 佐藤浩:光学技術の辞典,110 節(朝倉書店,東京,2014,p427.
15) 牛山善太,草川徹:シミュレーション光学(東海大学出版会,東京,2003