光学設計ノーツ 39 (ver,1.0)
部分的コヒーレント結像の考え方
transmission crosscoefficient について
部分的にコヒーレントな状態における結像を考える上で重要な transmission cross-
coefficient の考え方について、今回は触れさせていただきたい。導出についての座標、
学系配置、変数については前回におけるものと同じである。換算座標で書き直した図1を
ご参照いただきたい。
1.
transmission cross-coefficient の導出
ここで、物体面上の複素コヒーレンス度を考えると、本連載第32回(11)式よ
り、
22221111
212112
2112
,,
,,,
,
DDDD
DDDD
YXJYXJ
YYXXJ
QQ
1
ただし、
 11
2
111111 ,,,,, DDDDDD YXIydxdYXyxAYXJ
-2
 22
2
222222 ,,,,, DDDDDD YXIydxdYXyxAYXJ
であって、物体面上における、それぞれの単独の点における強度を表す。
ここで、本連載 33 回ファン・シッター-ツェルニケの定理16式の場合と同様に
μ12Q1Q2)が、点 Q1Q2の距離のみに依存すると考えると、
2121122112 ,, DDDD YYXXQQ
3
となるので、1)式は、
212112212112 ,,,, DDDDDDDD YYXXKYYXXJ
4
と変形できる。ただし、
22221111 ,, DDDD YXJYXJK 5
と置いた。
さて、結像系の入射瞳面上の複素振幅分布は物体複素振幅分布のフーリエ変換で表さ
れるので、この分布は、


DDDDDD dYdXyYxXiYXOyxo
2exp,, 6
と表現できる。これを逆フーリエ変換すると、物体面上の複素振幅分布は


dxdyyYxXiyxoYXO DDDD
2exp,,
と出来る。そこで、前回と同様に物体面上の2点に対する


1111111111 2exp,, dydxYyXxiyxoYXO DDDD
7


2222222222 2exp,, dydxYyXxiyxoYXO DDDD
を考える。すると、本連載前回の(8)式、


221122111212 ,,,,,, DDDDDDDDDD YXOYXOYXYXJYXJ
21212211 ,, DDDDDDDDDDDD dYdYdXdXYYXXASFYYXXASF
(388)
は(4,(7)式より、
 

221121211212 ,,,,, yxoyxoYYXXKYXIYXJ DDDDDDDD
2211 ,, DDDDDDDD YYXXASFYYXXASF
212122112211
2exp DDDDDDDD dYdYdXdXYyYyXxXxi
(8)
となる。ここで、

2211122211 xXXxXXXxxXxXx DDDDDDD
-(9

2211122211 yYYyYYYyyYyYy DDDDDDD
と置き、


2121122121 ,,,, DDDD YYXXKyyxxR
2211 ,, DDDDDDDD YYXXASFYYXXASF
22221111 2exp2exp yYYxXXiyYYxXXi DDDDDDDD
2121 DDDD dYdYdXdX 10
と新たな関数を置けば、8)式は、

DDDD YXIYXJ ,,
12
 


DD YyyXxxiyyxxRyxoyxo 121221212211 2exp,,,,,
2121 dydydxdx
-(11
となり、(388)式とは異なる表現が可能となる。上式における
R
(
x
1,
x
2
y
1
,y
2
)transmission
crosscoefficient(以下、TCCと呼ぶ。物体(原稿)面複素振幅分布のフーリエ変換と TCC
が得られれば、それらから像面上の強度分布が計算出来る訳である。
もし、常に
R
(
x
1,
x
2
y
1
,y
2
)=1 であれば、11)式は、

DDDD YXIYXJ ,,
12
 

111111 2exp, dydxYyXxiyxo DD
 

222222 2exp, dydxYyXxiyxo DD

2
,,, DDDDDD YXOYXOYXO 12
となる。これは、物体の分布と同じ強度分布が得られることを表している。TCC (10)
にある通り、原稿上の複素コヒーレンス度、光学系の点像振幅分布関数により成り立って
いるのであるから、
R
(
x
1,
x
2
y
1
,y
2
)は光学系の結像性能も含めて、コヒーレンスによる像強
度分布の変化の程度を表す係数であると考えられる。
2. 参考文献
1) M.Born&E.Wolf:光学の原理Ⅲ、第 7 版/草川徹訳(東海大学出版会、東京、2005)
2) 小瀬輝次:フーリエ結像論(共立出版社、東京、1979)
3) 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス社、東京、2005)