光学設計ノーツ 58(ver.1.0)
キルヒホッフの回折積分式 1
今回からは実用的な回折振幅強度計算の基礎となる、キルヒホッフ(kirchhoff)の回
折積分式について、ヘルムホルツ(Helmholtz)方程式から出発して述べさせて戴きたい。
特に今回はそのまた基本となるキルヒホッフノ積分定理について解説させて戴く。
1. キルヒホッフの積分定理
スカラー波動方程式、
2
2
22
2
2
2
2
21
t
U
z
U
y
U
x
U
A
において厳密な単色波を考慮し
tiruU
exp B
として、時間項を分離した形を考えると、
0
2
2
2
2
2
2
2
uk
z
u
y
u
x
u
ただし、
2
k
なる、時間に依存しない、波動の空間的な状態を表すヘルムホルツ方程式が導かれる。
ここから、実用的な回折強度計算式としての解を導こう。
1にあるような空間内の閉曲面を考える。
1 波動空間における Green の定理の適用
その内向き法線を
として、それぞれ、滑らかな閉曲面 Sで囲まれた内部空間を Vとし、
V内および曲面 S上で、関数
U,G
がそれぞれ、それ自身と、その1次および 2次導関数が
連続である時、以下の関係、グリーン(Green)の定理 3),4),8)が成立する(第 2公式)

d
n
U
G
n
G
UdvUGGU
VS
 
22 2
nU nG は閉曲面 S上の点における内向き法線方向に沿った関数
U,G
の微分係数
を表している。上記(1)式は
0
22 uku
とも表せ、ここで関数
U
,
G
が(1)式、ヘルムホルツ方程式を満たしていれば(2)式左辺
の被積分関数は常に、
0
22 UGkGUk
となり、(2)式は
0

d
n
U
G
n
G
U
S
3
と出来る。ここでこの様な条件を満たす関数の一つを Green 関数として以下のように決め
る。

s
iks
QG exp
4
ここで、この閉曲面領域内の任意の観測点を Pとするとき、この点 Pから、やはりこ
の領域内、曲面上のある点 Qに達するベクトル
の大きさを
と表している。従って(B
式での時間項の指数の符号に注意すれば、4)式は明らかに原点 Pを中心として広がって
行く球面波を表していることが理解できる。
ところが(3)式の面積積分を考える際に、
s
=0となる P点はこの関数が不連続であ
って特異点となるのでこの点を取り除いて空間を考えなくてはならない。そこで点 Pを中
心とする微小半径 ε、表面積
S’
の球をこの空間から切り取る。すると3)式における積
分面積は
S
+
S’
となり、4)式も考慮すると、
0
'

d
n
U
G
n
G
Ud
n
U
G
n
G
U
SS
5
となる。
ここで、4式の関数を用いて小球についての面積分を考えよう。ところで、 n
s
n
方向へ
Q
が微小量△
n
移動して Q’となった場合の
の変化の割合を表している(図 2
2
S
の変化
従って、
n
s
n
s
n
0
lim

n
snns
n
2
2
0
sincos
lim

n
sns
s
n
s
n
cos21
lim
2
0
微小量△nに比べsは非常に大きな量と考えれば、上式根号内のそれらの2次の項は消えて、
さらに根号内の第 2<<1として、根号に 1次近似を行い計算していくと
n
s
s
n
s
n
cos1
lim
0
cos
2から分かるように、下記の cos の位相は、ここでの二つのベクトルの為す角度を表すと
して、 sn
,の方向による cos の符号に注意して、

sn ,cos
となる。
2. 参考文献
1) 飯塚啓吾:光工学(共立出版、東京、1983)P27
2) 石黒浩三:光学(共立出版、東京、1953)P46
3) 大頭仁、高木康博:基礎光学(コロナ社、東京、2000)P113
4) 高木貞治:解析概論、第3版(岩波書店,東京,1997)P380
5) 辻内順平:光学概論Ⅱ(朝倉書店、東京、1979)P60
6) 鶴田匡夫:応用光学Ⅰ(培風館、東京、1990)
7) J.W.Goodman:Introduction to Fourier Optics 2nd.edi.
(McGraw-Hill,NewYork,1996)P38
8) R.GuentherOPTICSJohn Wiley & Sons,New York,1990
9) M.Born & E.Wolf :Principles of Optics,7th edition(Pergamon Press,
Oxford,1993)/草川徹訳光学の原理(東海大学出版会,2005)P575
10)牛山善太波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス社、東京、2005)P111