光学設計ノーツ 72 (ver.1.0)
体積ホログラムの回折効率を考える 9
今回も引き続いて厚さのある体積ホログラム(thick hologram)の回折効率(diffraction
efficiency)を考察すべく、H.Kogelnik参考文献[1]の結合モード理論coupled- mode theory
(或いは結合波理論(coupled-wave theory)について解説させていただきたい。今回はホロ
グラムによる吸収の無い場合の回折光の位相を得るための式を導出する。さらに回折効率
の評価式に達する。今回はいよいよ回折効率計算式導出の最終回と成る。
なお、前回同様、参考文献[1]とともに、その解説が丁寧に記されている貴重な邦文で
ある参考文献[6]を参照させて戴いている。
1.吸収の無い場合の透過型位相ホログラムの回折効率
本連載前回 71 回において

2
2
22
1
sinexpexp
t
cc
c
i
SRS
R
(72-8)
と透過型ホログラムの回折効率を考える上で、重要な式が得られた。
ここで、吸収の無い場合の誘電体ホログラムについて考えると、吸収が無いので、
0
1
(9)
である。
また、本連載 65 回(1)式の近似、
0
2
n
1
2
n 65-1
10 nn 
が成り立つ範囲で考えているので、同じく 65 回(6)(8)式、
0
0
2
c
65-6
0
1
0
1
2
4
1

c
i65-8
式より、
4
2
2
1
0
1
i 10
となる。ところで、ε0は比誘電率の平均であり、ε1は比誘電率変調の振幅である。また同様に
n0は屈折率の平均であり、n1は屈折率変調の振幅である。従って、
0101 nn
0
0
1
01 1nn
(65-1)式の近似が成り立つとして、また根号内の第 2 項は(65-1)式からも微小であると考
えられるので、
0
0
1
01 2
1
n
0
0
1
2
0
1
2
(11)
従って、(10)(11)式より、(65-8)式は、
2
11
i
n 12
と成る。ここで、吸収の無い場合の(8)式について考えれば、
1
n
13
であって、前回(4)式、
SRcc
t
(71-4)
は、
SRcc
tn
1
(14)
と置ける。さらに、(9)式より、
S
c
it
2
なので、新たに
i
c
t
S
2 (15)
と置けば、(71-8)式は

2
2
22
1
sinexp
i
c
c
i
SS
R
(16)
と出来る。ν、ξは実数であるので(70-8)式、
SS
c
c
R
S
(70-8)
より、回折効率は


2
2
22
2
2
22
1
sinexp
1
sinexp
i
c
c
ii
c
c
i
c
cS
R
S
R
R
S
2
2
222
1
sin
(17)
として表される。
3. 参考文献
[1] Kogelnik, Bell Sys.Tech. J., 48, 2909 (1969).
[2] A.Yariv光エレクトロニクス展開編/多田邦夫、神谷武志監訳(丸善、東京、2002)p.676
[3] M.Born & E.Wolf :Principles of Optics,6th edition(Pergamon Press,
Oxford,1993)草川徹、横田英嗣訳:光学の原理(東海大学出版会,1977).
[4] J.W.Goodman:Introduction to Fourier Optics 2nd.edi.
(McGraw-Hill,NewYork,1996)p.336
[5] J.W.Goodmanフーリエ光学 / 尾崎義治、朝倉利光 (森北出版、東京、2012p.326
[6] 辻内順平:ホログラフィー(裳華房、東京、1997)
[7] P.Hariharan:Optical Holography Principles,techniques and applications,2nd.edi. (Cambridge
University Press,Cambridge,1996)p.48
[8] 辻内順平:光学概論Ⅰ(朝倉書店、東京、1979)
[9] 三好旦六:光・電磁波論(培風館、東京、1995)
[10] 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス、東京、2005