光学設計ノーツ 76
平面波合成で考える完全結像
本連載 54 回で、複素電場が様々な方向に伝播する平面波の合成によって表せるという、
平面波スペクトル法(合成法)について解説させていただきたいた。今回は再びこの平面波
合成法をとりあげ、この手法を用いて完全な結像成立のための条件について考えさせて戴
く。完全結像のための興味深い条件がそこから得られる。
1. 平面波合成による光波の記
平面波の一般形(
A
は最大振幅)
rkiAu
exp 1
を考え、αβγ を、平面波進行方向を表す方向余弦とすれば、
1
222

,,
2
k
であり、 (1)式は
 
zyx
i
Azyxu
2
exp,,
と置ける。ここで、様々な方向に進行する平面波の重ねあわせによる、新たな波動を表す複
素関数を改めて
u
( )とすれば、総ての平面波の方向は α、β で定まるので
 
dddzyx
i
Azyxu
2
exp,,,, -(3)
と表現することが可能である。波数
2
k
を用いれば

dddzyxikAzyxu exp,,,, 4
となる。光軸上の物体面上に(x,y,z)座標系を考えて、ここでの x,y 平面上での平面波の合成
を計算すれば(4)式は、

ddyxikAyxu exp,0,, 5
同様に像面上に(x’,y’,z’)座標系を考えこの面上での平面波の合成は、

''''''exp',''0,',''
ddyxikAyxu 6
と表せる。
2. 完全な結像のための条件
さて、ここで、完全な結像を、被写体平面上の模様、構造の、像平面上における完全に相
像としての再現と考えると、大きさ、明るさには任意性があるとして系数
P,Q
を用い、

0,,0,','' yQxQPuyxu
7
と置ける。この(7)式を(5)式に代入すると

ddyQxQikAPyxu
exp,0,, 8
が成立する。ここで、(6)(8)式を比較する。(8)式の積分変数を
α/Q
β/Q
と置き換えると
 
dd
Q
yxik
QQ
APyxu
2
1
exp,0,, (9)
したがって、

QQ
A
Q
P
A
,,' 210
が成立すれば、積分変数をα、β α、βと置き換えれば(9)式は(6)式と同じ
になる。この(10)式が完全結像の条件と成る。ここには位相の変化が無いので、平面波は
出後も平面波であって、進行方向に一様な定数がかかったものとなる。結局、入射波の方向
余弦を用いて表せば
Q
(11)
Q
という関係が得られる。さらに方向余弦は z軸からの角度θとその周りの回転角φを用い
て以下の様に表現出来る。
物界については、
cossin
(12)
sinsin
となる。像界については、平面波の進行角度そのものを表すベクトルは、光学系が光軸につ
いて回転対称であれば光軸を含むメリディオナル内に一旦存在すれば、その後も常に存在
すると考えられるので
θ
φ
0
1 平面波の進行方向の表示
cossin
(13)
sinsin
と表される。従って、11)式から、
sinsin Q
14
という関係が得られる。平面波が入射し(14)式であらわされる方向に平面波として射出する
という構造が完全結像のためには求められる。
3. 参考文献
1)A.Walther:The Ray and Wave Theory of Lenses
(Cambridge University Press,Cambridge,1995)
2)M.Born & E.Wolf :Principles of Optics,7th edition(Pergamon Press,
Oxford,1993)草川徹訳:光学の原理(東海大学出版会,2005)
3)ヤリーブ:光エレクトロニクス基礎編(多田邦夫、神谷武志監訳)
(丸善、東京、2002
4)J.W.Goodman:Introduction to Fourier Optics 2nd.edi.
(McGraw-Hill,NewYork,1996)
) 谷田貝豊彦:光とフーリエ変換(朝倉書店,東京, 1992
6) 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス社、東京、2005