光学設計ノーツ 77
完全結像の光学系配置
前回において平面波合成により完全結像のための条件が導けたがその条件を満たす光
学系の構造について今回は考察させて戴く。
1. 完全な結像のための条件
(第76回)で物体面上の複素振幅分布を以下の様に平面波の合成として記述する。

ddyxikAyxu exp,0,, 76-5
すると像面上の複素振幅はやはり平面波の合成として、積分変数を
α/Q
β/Q
と置き換え
ると
 
dd
Q
yxik
QQ
APyxu
2
1
exp,0,, 76-9
と表せた。そこで、図1にある角度を導入すれば
sinsin Q
76-14
という関係が得られた。平面波が入射し(76-14)式であらわされる方向に平面波として射出
するという構造が完全結像のためには求められることが分かった。
2. 完全な結像のための光学系の構造
さて、この条件を満たす光学系はどのような構造になるか具体的に考えてみよう。まず図
2に入力、出力の場について示そう。多数の平面波が物面より発生し、多数の平面波として
像面で干渉し画像を形成する。(回折理論から非常に細かい情報を持つ被写体からは、光軸
に対して非常に大きな角度を成して伝播する平面波が発生する。従って、厳密には完全な結
像のためには無限に大きな光学系の開口が必要になる。その意味では、図 2にある様な有
限な大きさの光学系を考えた時点で、波動光学的な完全結像は不可能になっている事回折
限界の存在には注意を要する。
θ
φ
0
1 平面波の進行方向の表示
さらに平面波の進行方向のみを表現すれば、代表的な方向について図示すれば、
となる。ここで、さらに図3の平面波の進行方向を表す代表的な一本の線分、それに像界で
対応するを線分を一本の光線とみなして、その経路について考え、光学系の近軸理論による
主平面上に光路を書きいれると以下の如くになる。
2 平面波の発生と収束
3 平面波の進行方向を表す
この場合、
tantan ab
1
となり、(76-14)式とは異なる結果と成り、完全結像条件は成立しない。そこで、どの様な構
造が光学系に求められるか考察すると、主平面の様な等価屈折面と呼べる様な仮想屈折面
を考える限り図 5にある構造に行きつく。主平面の代わりに、Oを中心とした半径の a
円、O’を中心とした半径 bの円を考えている(主平面と同じ機能を持つと考え一般的には
主表面と呼ばれる)。この場合、図から明らかな様に、
sinsin ab
2
の関係が成立し(76-14式の完全結像の条件に合致していることが分かる。これは画面中
心付近についてのみの完全結像性を考えればまさに、正弦条件そのものである。
θ θ
4 主平面を考えた場合の構造
a b
θ θ
5 主表面を考えた場合の構造
a b
H H’
O O’
3. 参考文献
1) A.Walther:The Ray and Wave Theory of Lenses
(Cambridge University Press,Cambridge,1995)
2)M.Born & E.Wolf :Principles of Optics,7th edition(Pergamon Press,
Oxford,1993)草川徹訳:光学の原理(東海大学出版会,2005)
3)ヤリーブ:光エレクトロニクス基礎編(多田邦夫、神谷武志監訳)
(丸善、東京、2002
4)J.W.Goodman:Introduction to Fourier Optics 2nd.edi.
(McGraw-Hill,NewYork,1996)
) 谷田貝豊彦:光とフーリエ変換(朝倉書店,東京, 1992
6) 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス社、東京、2005