LED 照明ノーツ 25
レンズを使う12
<間を空けて存在する二つのレンズによる色収差の除去>
回は色収差除去のための基本的な配置を学んだ。そこでは光学系として、凸レンズと
凹レンズが密着している場合(ダブレットレンズ)の最もシンプルな構成を取り上げた。この
様な光学的要素は多くの光学系に見られる。非常に重要なパターンである。ただ、あくまでも
2 レンズが密着した場合であり、密着して置かれていない 2 レンズについてはどうであろうか?
今回はさらに、この様にもう少し異なった状態での色収差の除去について考えてみよう。
1.間隔のある薄肉レンズ 2 枚による色消し条件
本連載前回では薄肉密着系による一次の色消しを考えたがここでは、この薄肉レンズの組が間隔
Dを置いて存在している場合について考える。
近軸計算により、全体の焦点距離 fを用いて以下の式が成り立つ。
2121
111
ff
D
fff
ここで、やはり前回と同様に、

0
111
,,
2121
21 fff
D
ff
fffF
と置いて全微分すれば、関数
F
はこれらの変数の変化について定数であるおので、
F
=0 であって、
0
2
2
1
1
df
f
F
df
f
F
df
f
F
(3)
ここで、
2
2
1
2
11
1
ff
D
ff
F
1
2
2
2
22
1
ff
D
ff
F
2
1
ff
F
なので、(3)式は
0
111
2
2
1
2
2
2
2
1
2
2
1
2
1
f
f
f
ff
D
f
f
ff
D
f
(4)
従って、
1
2
2
2
2
2
1
1
211 f
D
f
f
f
D
f
f
f
f
となる。
薄肉単レンズでは、屈折率変化に対する焦点距離の変化の関係は本連載前回第 24 回の(3)式、
1
n
n
f
f
により表されるので、この場合、
dd
cF
n
nn
f
f
1
1
1
1
として(5)式は、間隔 Dを持つ薄肉レンズ系の色消し条件として
01
1
1
1
1
22
2
11
2
f
D
f
f
D
ff
f
dd
6
と表される。
この場合は、アッベ数の等しい、同じ硝子を用いたとしても上記(6)式より、アッベ数が式から消えて
0
11
212211
ff
D
fff
D
f
となる。この式より、
0
21
1
21
2
ff
Df
ff
Df
従って
Dff 2
21
8
なる条件のもと、一次の色消しを行う事が出来る。この時、例えば
DfDf 2
1
,
2
3
21 Dff
21
などとしても良い。実はこの時、焦点距離fのみを合わせるための一次色消しが行なわれているので、
主点位置は波長により異なり、焦点位置自身は異なっている。しかし倍率による像の大きさには違いが
起きないので、倍率の色消しと呼ばれる。平行光がこの光学系に入射した場合の近軸 結像状態を
1(軸上の場合)、図2(軸外の場合)に示す。焦点距離が一定となることで、像の大きさも保たれてい
ることが分かる。
1 倍率の色消し 無限倍軸上光線
2 倍率の色消し 無限倍軸外光線
しかし、この色消しにおいては、結像位置は異なっているし、また有限倍の時には、入射主点位
置も波長により異なるので、焦点距離は同じでも、物体から主点までの物体距離が波長により異なり、
結像倍率も変化するので(図 3)、
3 倍率の色消し 光線の微小な角度のずれ
これらの結果が顕著に表れるカメラなどの一般的な結像系には用いることが出来ない。瞳径が比
較的小さい(眼により光束が絞られる)、望遠鏡の接眼レンズ等においては、特に画角が大きな場合の
画面周辺の大きな倍率色収差を抑えるための用い方がある。これについても図 3をご参照願いたい。
同じ角度で眼に入射した光線群は網膜上、一点に集光する。光束が十分細ければ色による光線角度
の違いは目立たない。
2.参考文献
1) 久保田広:応用光学/POD 版(岩波書店、東京、1980)
2) 東條四郎:レンズ(河出書房、東京、1942)P211
3) 鈴木達朗:“幾何光学”光学技術ハンドブック(朝倉書店、東京、1997)P69
4) 早水良定:光機器の光学Ⅰ(日本オプトメカトロニクス協会、東京、1995)
4) 吉田正太郎:屈折望遠鏡光学入門(誠文堂新光社、東京、2005)P206,P259