LED 照明ノーツ 26
レンズを使う 13
<色収差、2次スペクトルについて>
ここまでは、C線、F線などの2波長についての色消しについて考えて来た。この様な2波長について
の色消しが成っているレンズをアクロマート(achromat)と呼ぶ。この2波長以外の波長に対しては、色収
差が残存する場合が極一般的に考えられ、この残存する色収差を2次スペクトルと呼ぶ。この2次スペクト
ルを除去するためには、蛍石などの高価な特殊な材料が用いられ、2次スペクトルが除去されているレン
ズ、或る比はそれに近い性能を持つレンズをアポクロマート(apochromat)と呼ぶ。
特に、2次スペクトルとしては一般的なレンズにおいては、より波長の短い(紫寄りの)g線(435nm
を考える場合が多い。精密な結像が必要となる顕微鏡対物レンズ、或いは長い焦点距離によって、こうし
2次スペクトルもそれに比例して目立つようになる、望遠レンズの設計時においては重要な評価項目と
なる。
1. 2次スペクトル
C-F 線の一
次の色消し条件は、
0
11
2211
2
ff
f
f
1
ここで、F、g線についての色収差をδf’として、この場合の分散率をν
Fg
dnn
n
1
2
とすれば、
0
11
2211
2
ff
f
f
3
となる。また、合成焦点距離 fについては
21
111
fff
であるから(1)式より
2212
2
1111
fff
f
f
2211
1111
ff
221
12
1
11
ff
であって、
221
12
1
2
11
ff
f
f
1
2
221
12 11
ff
f
f
12
21
1
2
1
2
1
f
ff
f

12
2
221
f
ff
となる。ここで、一次色消しが為されているとすれば、(5)式においてδf=0 であるから、

12
2
2
1
ff
この関係を、(4)式を利用して(5)式を変形した
2212
2
1111
fff
f
f
に代入して整理すれば
0
12
1
1
2
2
f
f
これが2次の色消しの条件となる。上式における
cF
Fg
d
Fg
cF
dnn
nn
n
nn
nn
n
1
1
1
1
1
を部分分散比と呼び、この値は光学ガラスメーカーより硝材 data として公示されており(1)
1 アッベ数ー部分分散比(g、Fsumita 硝子
2次の色消しを考える際には重要な定数となる。(7)式から、明らかに、
2121
となる様に硝子を選択する事が重要になる。しかし、部分分散比-アッベ数グラフではだいたい
直線状に硝子は分布するので、これらの一般的な範囲の硝材を利用する限りは、これらの一般的
な硝子の組み合わせ、そして焦点距離より得られる、一般的なレベルでの2次スペクトルの収差
を特別に補正する事は出来ない。そこで、2次スペクトル除去のためには、ホタル石等に代表さ
れる、一般的な直線分布から外れる異常分散性を持つ硝材を採用する事になる。この様な異常分
散性を持った硝子は高価であるので、2次スペクトルが除去されたレンズは高価になり、多くの
場合、赤だとか金の帯がレンズ鏡筒に描かれその性能の高さが表現されている。
レンズ構成で最も基本となる密着型の 2枚レンズでの焦点距離の色収差の除去の考え方につ
いては、これまでに触れさせて戴いた1次スペクトルの除去も当然踏まえて、次回以降で解説さ
せていただきたい。
2. 参考文献
光学技術の基礎講座”(トリケップス、東京、1993)
小倉敏布:写真レンズの基礎と発展(朝日ソノラマ、東京、1995)
3) 高野栄一:レンズデザインガイド(写真工業出版社、東京、1993)
4) 辻内順平:光学概論Ⅰ(朝倉書店、東京、1979)
5) 松居吉哉:結像光学入門(JOEM、東京7)1988)
6) 村田和美:光学(サイエンス社、東京、1979)
7) 吉田正太郎:屈折望遠鏡光学入門(誠文堂新光社、東京、2005)P206,P259