LED 照明ノーツ 32
レンズを使う 19
<機械補正式、2群ズームについて 1
はじめに
前回は非常にシンプルな構造の光学補正式のズームタイプについて説明させていただ
いた。今回は本格的な現代のズーム、機械補正式ズームとしてもっとも構成のシンプルな 2
群構成ズームについて考えさせて戴く。今なお広角系のコンパクトズームとしては様々な
新しい技術を取り入れて定番的な構成である。
1. 2 群ズームとは
例えばそれぞれ、焦点距離f1、f2の凸と凹のレンズが間隔
をもって存在すれば、
合成焦点距離
f
は、以下の如くに計算できる[1]
2121
111
ff
d
fff (1)
或いは屈折力を用いて
d
2121
通常のタブレットレンズの要素の様にレンズが正・負であれば間隔が大きくなれば合成屈
折力は正の方向に大きくなる(負のパワーが強ければ、負のパワーは弱まる)。この様に複
数枚構成のレンズにおいてもそれらを 2つの群に分け、2つの群の間隔を変化させ焦点距離
を可変とすることが、広い意味での焦点可変レンズの基本的な考え方である。
もしここで、像面位置が一定になる様に焦点距離の変化しているレンズを並べていけば
以下の様な図(図 1)が書ける。
1 2群ズームの考え方
焦点距離が変化しているが像面位置は一定に保たれる。もし、焦点距離が変化してその際に
像面位置が不動であるレンズをズームレンズと呼ぶのであれば、これがまさにそれで、2つ
のレンズ群で構成されている、2群ズームレンズと呼ぶことができる。
多少複雑な、軌跡を 2群の運動が描こうとも、もし精確な補正カム製作が機械加工上
可能であれば(数値制御工作機械(NC)により)、光学補正式の場合と異なり、ある程度
の広さのズームレンジで常に像面位置が不動なレンズを現実化することが出来る。これを
光学補正式に対して機械補正式ズームレンズと呼ぶ。
凸と凹レンズが入れ換わっても同様の系が成立する。実際にはこうした 2群ズームは
広角ズームに向いていて、凹レンズを先行させれば焦点距離の短いワイド端でレンズが離
れ所謂、レトロフォーカス型の配置になり、比較的シンプルな構成でバックフォーカスを長
くとれ、レンズ後の像面との空間を大きくとることができる(2)
2 レトロフォーカス(逆望遠)型配置
負の群
正の群
焦点距離
そもそもズーミングに際して、撮影者のために工夫が必要なレンジファインダー式と
異なり、画角の変化が直接見える一眼レフカメラはズームレンズとの相性が良いものであ
る。その相性を生かすためには一眼レフカメラにおいて目視用のプリズムに光を導くため
のミラーが撮影の瞬間ごとに回転し、たとえ装着レンズの焦点距離がミラーの大きさより
短くとも、レンズの結像のための光路から逃げるスペースをレンズの後ろに確保する必要
がある。従って前群が凹群のタイプが一眼レフカメラ用広角ズームにおいては採用される
ことと成る。
一般的には複数のレンズでこうした群要素を構成することが多いので負先行の構成と
呼ぶ。ただし、各群のパワーに比べてパワーの変化についてはそう大きなものは望めず、
般的には広角よりのズーム比の比較的小さなコンパクトズームに向いている形式である。
2. 2群ズームの近軸配置[2]
ここで、少し近軸理論的にその配置について考えてみよう。図 3にある様に諸元を決
める。
3 2群ズームの近軸理論的構造
負の群
f
1
正の群
f
2
f
1m
f
1
d
L
a
b
前群、後群の焦点距離をそれぞれ f1f2、その間隔をdとする。この時 f1
m
倍の値
が全体のこのズームレンズの焦点距離とする。従って、(1)式から全系のパワーを考えて、
21211
111
ff
d
ffmf 3
よって
12
2ff
m
f
d 4
f1が負であるとすると、
a
も負であるから
dfa 15
なので、
m
m
fa
1
26
また図より
2
111
fba
7
なので、(6)式より
21
2
11
1
1
fmfL
f
m
m
8
この式を計算して行くと

mmfLmfLfm 112
1
さらに
mfmffL 212
(9)
従って、
mffmfLb 221

2
1fm 10
となる。
3. 参考文献
[1]松居吉哉:レンズ設計法(共立出版、東京、1972)
[2]中川治平:レンズ設計工学(東海大学出版会、東京、1986),p141
[3]R.Kingslake:Lens Dsign Fundamentals(AcademicPress,SanDiego,1978)
[4]ルドルフ・キングスレーク(雄倉保行訳):写真レンズの歴史(朝日ソノラマ、東京、1999)