LED 照明ノーツ
基本的な反射、拡散における BSDF について
前回は物質表面の反射拡散透過特性を表す関数、BSDF の基本的な定義・
性質について説明させていただいた。理論的な様々な数式からこの関数を決定す
る事は勿論可能であるし、測定値からこの関数を決定していく事も可能であると
言う、実に応用性に富んだ概念である。またどの様な BSDF 関数が、換言すれば、
拡散分布が、使用目的を達成するために、光学要素の表面に施されるのが適当
か?等の解析的な考察にも役に立つ。今回はそうした折にも有用である、完全拡
散、整反射などの基本的な光学現象における BSDF 関数について触れさせていた
だきたい。
BRDF による強度反射率の表現
前回における BSDF の定義を再び記させていただけば、以下の通りである。


iiii
rr
ri ddL
dL
BRDF
cos
,
(0)
微小面積
dA
への入射光全体の齎す、特定の方向への反射輝度は、当然のこ
と、
dA
を囲む半球全体の立体角の積分として、以下の様に表わされる(1)

iiiiirirr dLBRDFL
cos,
(1)
また、強度反射率 Rは入射と反射のエネルギーの比、
i
r
I
I
R (2)
として表わされた。よって、(1)式をさらに、反射角度を考慮し、反射方向半球
の全立体角について積分すると、単位面積から反射される全エネルギー放射発
散度が計算できるので、これを全体の入射光による照度で割れば、(2)式と同様
の計算が成り立ち、以下の様に、強度反射率 Rが得られる。




i
ri
iiii
ririiiri
dL
ddLBRDF
R
cos
coscos,
(3)
2. 整反射における BRDF
ここで、媒質境界面おいての、強度反射率 100%の完全な反射を仮定し、BRDF
の用いられ方の一例として、その場合の BRDF について考えてみよう。図 2
ある様に入射射出方向を、法線との角度方位をで表わせば、完全な反射の
場合、スネルの反射則より、
ir
ir (4)
完全な反射であれば、入射光と反射光の輝度は等しいので、

rrirr
rLL ,, (5)
となる。また、立体角について考えれば、半径
r
の円の、角度
a
ラディアンの扇
形の円弧の長さは
ar
なので、(4)式の立体角の積分を角度、方位の積分に書き換
えて、


2
0
2
0sincos,, iiiiiiiirrrr ddLBRDFL (6)
となる。ここで、デルタ関数を考えれば、
x
0 であれば
0
x
そして、

1dxx
よって、上記()()式の条件を成立させるためには、以下の値が BRDF 値と
して推測される。

ii
riri
ir
BRDF
sincos
(7)
因みにこの(7)式を(6)式に代入すると、デルタ関数の別の性質、

yfdxxfyx
(8)
より、
 

2
0
2
0,, iiiiiririrrr ddLL

2
0,
iriiri dL

rri
L, (9)
となり、(5)式を成立させる BRDF の値であることが理解できる。また、非誘電
体境界面においては、フレネル反射強度7)P236 (7)式右辺に乗じ、フレネル反
射を考慮した BRDF を設定でき、さらにコーティングの影響も入射角度の関数
として付加することも可能となる。この様な場合には当然、同時に生起する透過
光に対する BTDF による計算が必要になる。
3. 完全拡散面における BRDF
完全拡散(Lambasian)面反射における BRDF について検討してみよう。
定義(その名)の通り完全拡散面においては如何なる角度で光線が入射しようと
も、反射輝度はどの方向に対しても一様になる。つまり、BRDF も一定の値にな
るので、この場合(1)式は、

iiiiirr dLBRDFL
cos
i
EBRDF
(10)
となる。ここで、完全拡散における反射率を、上記の通り入射全放射束と反射全
放射束との比で表わせば、式中から面積が消えて、(3)式から、

i
r
iiii
rrrr
i
r
dL
dL
I
I
R
cos
cos
(10)式より、
i
rri
E
dEBRDF r
cos
B
RD
F
(11)
となり、
R
BRDF (12)
なる関係で、強度反射率と BRDF は結ばれる。仮に透過吸収が無ければ BRDF
1/となる。斯様に反射率と、完全拡散の様な面の特性を同時に表現できるのが
BRDF の優れているところでもある。
4. 直接透過光における BTDF の計算
ここで、既出第 2節の整反射における BRDF と対を成す、スネルの法則で
表わされる透過光についての BTDF について簡単に触れさせて戴く。この場合
にも(6)式と同様の式が入射光と透過光、BTDF について成り立つ訳であるが、
フレネル強度透過率を
T
で表わせば、クラウジウス(Clausius)の関係7)P64
8)(10)
d
S
dndSdn
coscos 22 (13)
と、反射・吸収がない場合の放射束の保存性、
d
S
d
dSd
coscos (14)
から、
L
n
n
L
2
(15)
となるので、
 
rii
i
t
tt
tL
n
n
TL ,,
2
(16)
と言う輝度同志の関係が導かれる。更に、球表面上での帯面積と球の直径に投影
した帯の巾との関係7)P45
rdx
s
2
(17)
を考えれば、これはつまり、球半径の
が決まれば、球面上のこの様な帯の表面
積は、帯を切り取る、二つの円盤の
軸上の間隔
dx
のみにより決まることを意
味するが、この場合、
i
ddx
cos
(18)
と考える事ができるので帯の面積は、
i
ds
cos2
となり、角度 dの動きにより切出される帯上の弧の長さは d/2となるので、
微小立体角を、

2
cos2 i
ii d
dd (19)
と表わすことが出来る。また、この後 BTDF を求める際に、スネルの屈折則を
反映させるために、デルタ関数の中の変数が sinの形になってしまう。そこで本
文中のデルタ関数の性質を利用するために積分変数を sinの形に一致させてお
く必要が生じる。ここで、

iii dd
sintancos
なる関係を利用して、
iiii ddd
sintan (20)
として(8)式と同様の形式の積分を行なうとすれば、

i
titi
it
i
t
i
tn
n
n
n
TBTDF
sin
sinsin
2
(21)
BTDF を設定することが出来る。上記の BRDF の場合と同様の検証が可能で
ある。
5.参考文献
1) J.C.Stover:Optical Scattering(SPIE Press,Bellingham,1995)
2) E.F.Church & P.Z.Takacs:SCATTERING THEORY,HAND BOOK OF
OPTICS (McGraw-Hill,New York,1995)
3) M.F.Cohen,J.R.Wallace:Radiosity and Realistic Image synthesis
(Morgan Kaufmann,San Francisco,1993)
4) F.E.Nicodemus,et al.:”Geometrical Considerations and Nomenclature for
Reflectance”,NBS Monograph 160,1977
5) “TracePro Users Manual”Lambda Research Corp.,Littleton,1995
6) 鶴田匡夫: 5・光の鉛筆(新技術コミュニケーションズ,東京,2000)
7) 牛山善太:シミュレーション光学(東海大学出版、東京、2003)
8) 牛山善太:光学設計ノ 17 回( HP
http://www.osc-japan.com/service/s05_17