LED 照明ノーツ
表面のランダム面における面粗さの表現につて
前回から、本連載において物質の表面荒さの表現についての解説を始めさせ
ていただいた。今回ではランダムな構造を持つ物質表面において、その表面荒さ
の表現方法について考えさせていただこう。勿論、ランダムな荒さの形をそのま
ま数学的に表現することは出来ないので、統計的な数字を扱うことになる。様々
な面の拡散性を扱う場合には重要な考え方となる。
1. ランダム面における面粗さの表現
プロファイルがランダムな面に対してはこれまでの様な一定の関数を用い
る表現は難しいが統計的な表現を行なうことはできる。1次元表面形状関数 z(x)
の変りに表面凹凸高さの確率分布関数 P(z)を用いることにする。zなる事象の
P(z)で表されている。例えば、P(z)の z1から z2までの積分は、
P(z)は分中に変化するzのそれぞれの値に対する、その現象の生起する確率
であるから、その連続的な和である積分は、)高さzが z1から z2の間に存在す
る確率を表わす。
この分布関数のタイプについてはいろいろなものが想定できるが、中心極限
定理からガウス分布を用いるのが一般的である。ガウス分布に限らず統計的標準
偏差は、n個のサンプルを考えれば、平均値を
x
i
として、

2
1
1
2
1
n
iixx
n
(1)
と表わされ、これまでの rms 値と同じものを表わす。みに、本連載前回(第8
回)で示した rms 荒さを表す連続的な式は以下の通りである。

2
1
2
2
2
1
lim
L
L
Ldxzxz
L
(8-9)
一般的にこの標準偏差を用いてガウス分布は以下のように表わされる。

2
2
2
exp
2
1
z
zP (2)
負から正への無限大についての P(z)の積分値は、全てのzの値に対する、その
存在する確率の和であるから、1になる。
この領域でのzの平均値を求めるにはある微小な範囲でのzの出現の確率
P(z)にさの値zを掛けて積分して行けば良い。例えば離散的に考えてn回試
行してある区間に現象が起こる(この場合、高さがその区間に存在する)回数を
P=k/n となるので、z1からznのn種類の現象が起こ
る確率は、これらを合計して、
nn
nn PzPz
n
kz
n
kz
z 11
11
となる。また、一般的にガウス分布となる P(z)は数であり、
zP
(
z
)は奇関数
×遇関数=奇関数となるので、

0dzzzPz (3)
である。すると前回における算術平均式、

2
2
1
lim L
L
L
adxzxz
L
(8-8)
から算術平均が、

dzzPz
a
(4)
rms (8-9)式から定義できて、

2
1
2
dzzPz
(5)
となる。さて、ここで(5)式に(2)式を代入してみると((2)式σσと表
しなおして)、
2
1
2
2
2
2
exp
2
1
dz
z
z
(6)
ここで、不定積分の公式、


dxaxx
a
n
a
axx
dxaxx n
n
n22
21
2exp
2
1
2
exp
exp (7)
を利用して、
2
1
2
2
2
2
2
2
2
exp
2
exp
2
1
dz
zz
z
(8)
である。さらに、(3)式と同様(8)式弧第1項の定積分は0になり、また定
積分の公式から、

0
22
2
exp a
dxxa
(9)
なので、
2
2
2
12

(10)
となり、ガウス分布(2)式における標準偏差と、この場合の rms 面粗さが同一の
ものであることが理解できる。
2. サンプリングによる粗さの表現
実際のサンプリング(測定)データから上述の面粗さ係数を求めるために
は、離散的な(1)式と同じ表現が用いられることになる。参考のために以下にそ
れらの式を挙げる。
N
nna zz
N1
ˆ
1
ˆ
(11)

2
1
1
2
ˆ
1
ˆ
N
nnzz
N
(12)
ただし、
N
nn
z
N
z
1
1
ˆ (13)
である。また、算術平均的面傾きについては(前回(13)式参照)
N
nnn
nn
az
xx
zz
N
m
21
1ˆ
1
1
ˆ (14)
rms 面傾きについては(前回(14)式参照)
2
1
2
21
1ˆ
1
1
ˆ
N
nnn
nn z
xx
zz
N
m (15)
ただし傾きの平均値として(前回(12)式参照)
N
nnn
nn xx
z
z
N
z
21
1
1
1
ˆ (16)
である。
参考文献
1) J.C.Stover:Optical Scattering(SPIE Press,Bellingham,1995)
2) E.F.Church & P.Z.Takacs:SCATTERING THEORY,HAND BOOK OF
OPTICS (McGraw-Hill,New York,1995)