自己混合半導体レーザを用いたセンサとその計測応用

光交流会第241回 光交流会オプトフォーラム
講演会『自己混合半導体レーザを用いたセンサとその計測応用』
講 師:篠原茂信氏(静岡大学名誉教授 工学博士)
光交流会 
代表幹事 関 英夫
担当幹事 吉村泰信
まず、半導体レーザを用いたレーザセンサの概要と特徴について述べられた。
用いるレーザセンサは1個のパッケージに発振光源と受光素子がともに内蔵されている。レーザから出射した光が物体で反射し、再びレーザに戻り内部の光と混合させることで光の周波数と強度が変調される現象を自己混合(Self Mixing)と呼び、この働きを持つ素子を自己混合半導体レーザセンサと呼ぶ。
この呼称は篠原先生が命名されたものでポピュラーではないが学会においてはすでに認識されている。
 
パッケージ内のフォトダイオードが光パワーの時間変化を検出して得られる電気信号を自己混合信号という。
この自己混合信号を使って速度の絶対値や正負の同時測定が可能となることからSM-LDドップラー速度計を考案された。
SM-LD速度計の特徴は「非接触測定が可能、光学系がきわめてコンパクト、軽量且つ安価」である。
速度の正負の判定は発振したノコギリ波の戻り波形の形をオシロ画面上の変化で判断が出来る。波形の山が左に傾いている場合は接近中・急上昇・緩下降を表し、波形が逆に右に傾いている場合は離反中・緩上昇・急降下を表す。
ドップラービート信号の近似解析により、離反・接近の判断とその速度が測定可能となった。この自己半導体レーザ速度計の延長線上に振動計の開発が実現できた。
 
ノコギリ波の上下のどちらか半分は半波長の変異であり、ノコギリ波の個数を速度の正負に応じて加算することで、振動計が生まれた。これについてはシステム外略図とドップラービート波形振動変位波形の復元原理図でもって説明がなされた。
続いて振動計に於ける複雑な振動波形の測定例と自己混合型レーザ振動計:LZB-05が紹介された。
自己混合型半導体レーザセンサの応用その3として、移動物体の三次元距離画像計測の実用化について、距離・速度計の説明がなされた。SM-LD距離・速度計の基本構成から、そのデータ検出方法、距離・速度算出式の解説がなされ、三次元距離画像計測の概要と特徴が下記のように述べられた。
SM-LD距離・速度計におけるレーザビーム光をスキャナで二次元走査することで移動物体の三次元距離画像を測定できる。
平面画像のみを測定するCCDカメラに比べて、本提案では測定した距離と速度から奥行き情報を測定できることが特徴である。
測定距離は約10cmから2m程度(レンズ系の設計を工夫すると、約5m程度までは拡張できる) 距離の測定精度は、停止物体では1mで±1.5mm。移動物体では1mで最大±10mm。
また移動する四角柱や球体は、近づく場合や遠ざかる場合の測定結果の説明なされた。
更に、自己混合型半導体レーザセンサの応用、その4として二重共振器を用いた精密変異計について、応用その5としてレーザスペックル速度計について説明がなされた。レーザスペックル速度計の概要が以下のように述べられた。
相対速度の測定
ドップラー効果が出ないように、レーザ光垂直照射による、平板内移動速度測定
(擬似)スペックル信号とは、表面のスペックル・パターンが移動するので戻り光の位相と強度変化を生じ、この結果変化した光強度を電気信号に変換したもの。
スペックル信号の周波数は、理想的には、速度に比例するが、実際は周波数対速度の直線には、オフセット周波数がある。
人体の手、指で血流速度の相対変化を測定。
→スペックル信号の周波数と体内の血流速度との構成直線が課題
レーザドップラー速度計による血流測定では、レーザ光の入射角は速度ベクトルに対して傾ける。
レーザスペックル速度計についてスペックル信号検出の原理、スペックル信号波形のモデル図、そしてヒトでの血流測定結果、メダカの血流測定結果、実測と理論の比較、レーザドップラー血流の測定例などについて詳しく述べられた。
中でもメダカの血流定量化の測定実験(尾鰭の部分にレーザ光を照射して、200倍実体顕微鏡画像でレーザスペックルの観察と同時に反射・散乱光のスペックル信号をFDで計測する)といったところの解説は実に興味深いものであった。
篠原先生のご研究は、一般的なLDやPDを用いた比較的簡素な装置でありながら、レーザ発振とその反射の周波数のとらえ方で、物体の速度・振動・変位・距離などの計測を可能とするものであり、すでに特許の出願や取得もされており実用化されている。
 
大変魅力的なご研究であり、聴講者一同は大変興味深く聴講させていただいた。篠原先生にはご遠方よりお越しいただき、大変有意義なご講演をいただきましたこと、改めて聴講者一同に代わって心より感謝を申し上げる次第である。
文:吉村 泰信

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