「渋滞と無駄のサイエンス」

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第250回光交流会オプトフォーラム
代表幹事 関 英夫
担当幹事 朝倉 耕治
今回の講師は東京大学教授 西成活裕先生です。
今回のフォーラムは250回目にあたり、これまでの当会活動の歴史に一本の区切り線を引くものとなりました。
折しも2009年最後の月、新しい年の始まりとともに251回目からのフォーラムが皆様とともに連綿と続いていくよう、意を新たにしたいと思います。
 
今回は「渋滞」、「無駄」といった身近なテーマを、学問の対象として考え、これらの解消、そしてこれにとって変わる方法論的指針を提案されていることで有名な西成先生による講演でした。
 
高速道路で渋滞に巻き込まれると誰でもイライラしますし、また週末ともなれば、これはしょうがないことと半ばあきらめてしまいます。
しかし、西成先生によれば(自然)渋滞を避ける手立てはあるということでした。
それはどんなに混み合ってきても車間距離を40mに取ることだそうです。
なぜ40mなのかは、人間心理に関わることのようで、緊急時以外ブレーキを踏まずに安心して運転できる距離が40mなのだそうです。
そして全員がこの車間距離で走行すれば渋滞は起こり得ないとのこと。
しかし現実はそううまくはいきません。
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急に割り込まれたりすると当然ブレーキを踏むことになり、それにつられて後続の車が次々とブレーキを踏む結果、車間距離が詰まり、1kmあたりの車密度があがり、全体としてノロノロした走行になってしまいます。
渋滞を避けたいのならばとにかく車間距離40mを守ることです。
 
渋滞は単にイライラするから解消したいばかりでなく、それは大変無駄なことであるというのが西成先生の考えです。
たしかに渋滞によって時間やガソリン消費量などの無駄が生じますし、また排気ガスの増加で環境にもよくありません。
渋滞は社会の無駄、この考えこそ西成先生が「無駄学」を創成したきっかけでした。
しかしなにが無駄でなにが無駄でないのかは価値観も入ってくるので、無駄の定義はすこぶる難しいものです。
「無駄ではない」のではない、こんなふうに無駄の否定をもってしか無駄の定義はできないのかもしれません。
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西成先生としては、短い講演時間では言い尽くせない点が多々あったはずですし、また私たちも、もう少し時間をかけて考えてみたいとの思いはあります。
そこでぜひとも西成先生の著作を読んでみることをおすすめいたします。
代表的な著作として次のものがおすすめです。
「渋滞学」 新潮選書
「無駄学」 新潮選書
報告:高木 貢一

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