光学設計ノーツ13.波面収差について1
点光源から射出した多数の光線がどうしても像面上で再び点として集まらず、ある面積の範囲に散らばり存在する現象が一般的な光学系において起こる。
これら、散らばりを収差と呼び、光学系を設計する際には、必ず考慮せねばならない量であり、また、この収差量を、光学的要素の適切な設定により、光学系の使用目的に応じた程度に押え込むことは光学設計者の重要な仕事の一つである。
収差というものは、多数の光線追跡の結果などからすると、一見、捉えどころの無い、無秩序なものの様に感じられるが、様々な基本的なタイプに分類・整理され、それらの性質が検討されていて、そこから生み出される理論は、光学系の設計、製作、そして利用に際して非常に重要な役割を果たしている。
本稿ではこの様な収差論の基本と成る、また、幾何光学とより精密な波動光学的評価を結び付け、その基礎となる波面収差について述べさせて頂く。
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株式会社タイコ 牛山善太
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わが社の技術・製品発表会、情報交換会
わが社の技術・製品発表会、情報交換会
光交流会第21期通常総会及び第240回 光交流会オプトフォーラム
『わが社の技術・製品発表会』/情報交換会/懇親会
光交流会
代表幹事 関 英夫
担当幹事 朝倉耕治
今回は、初めての試みで「情報交換会」を30分行いました。
小グループに分かれて、お互いの会社の業務内容などの自己紹介を行いました。顔は見知っていますが、案外会社内容については知らないものだなあと思いました。
業務内容から、社会情勢までいろいろな話題がかわされるなかで、人脈が広がり、ビジネスチャンスが得られれば、と思います。今後も続けて行きますので、話題を準備して是非ご参加ください。
毎月行われているオプトフォーラムは、光交流会の使命である情報交流のメインであり、その中でも「我が社の技術・製品発表会」は半年に一度定期的に行われる重要な催しでは有りますが、2月は総会月に当り充分な時間配分が行えず、結果として殆ど質問時間が取れなかった事が残念でした。
最初に御発表頂いた中原基博博士は、長年NTT電気通信研究所にて光ファイバ用母材の製造研究に従事し、世界を代表するVAD法を開発した中心人物であり、そのキャリヤを生かしたコンサルティング業務を主たる活動として設立されたのが㈱中原光研究所ですが、具体的な案件を多数列挙されたにも拘わらず、その内容は守秘義務の為聞く事が出来ませんでした。
ブッシュからオバマへの政権移行は企業に何をもたらすのか?⇒大企業からベンチャーへ...など聞いてみたかったなぁ~。後半は、石英製品の紹介となりました。
次の発表者レボックス㈱も去年8月入会のニューフェースです。
発表者鎌田社長は北海道生まれの北海道育ちだとか。
御自分の生い立ちや卒業後の経歴を熱っぽく、土っぽく力説されるその姿が、御自身のポリシーと会社のポリシーを重ね合わせながら同時に紹介するという、非常にユニークな講演形式でした。
LEDを主な光源とし、回路設計により電気制御を得意とするエレキよりの企業で、今までは建築関係の事例が多かった様です。
最後のKIプレスさんは会員ではありませんが、無理を言い講演を御願い致しました。
表題は「上手な販売促進のやり方」ですが、内容はBtoBにおける販売事例であり、大変珍しい内容でした。
講演者に直接聞くと、全事例とも実際に自分で足を運び集めてきた事例だそうです。講演最後に、「リピート倍増事例集」上妻英夫著を宣伝されていました。
企画部担当:興栄化学(株) 朝倉耕治(記)
最新のカメラおよびレンズ事情
第239回 光交流会オプトフォーラム
講演会 『最新のカメラおよびレンズ事情』
光交流会
代表幹事 関 英夫
担当幹事 吉村泰信
年初めのオプト・フォーラムは、写真技術研究家の市川泰憲氏(元写真工業出版社、編集長)をお迎えして、「最新のカメラおよびレンズ事情」と題してご講演をお願いした。
会員の皆さんの中にはカメラ愛好家が多いことから、写真用カメラ研究者として第一人者である市川氏にご講演をお願いした。市川氏は話し方の上手な方でリクエストも多くあったことから新年に際して再びご講演をお願いした次第である。
講演は、わが国光学会の貢献者の一人である小倉磐夫先生(元東大名誉教授・千葉大教授)の著書「最新カメラとレンズ技術」についての紹介から始まった。
小倉先生は朝日カメラの「ニューフェース診断室」ページにレギュラーで執筆しておられたことから、懐かしく聴講された方も多かったに違いない。マミヤやキャノンのEOS-1VとニコンF6が対照的に紹介され、海外ブランドではライカのバヨネットマウントを用いたカメラや2008年のフォトキナで発表されたデジタルカメラのライカM8が紹介された。
このカメラはレンズフランジ面を介して64通りの情報を伝達できる機能を備えている。聴講者が最も興味あるデジタル一眼レフカメラの解説は、ニコンD3、ニコンD60について、この2機種はクロススクリーンの効果フイルターを必要とせず画像に同効果を施せる機能や、背景のサチっている部分をアーク化する機能を持ったカメラである。
リコーGf200は、湾曲収差の補正ができるON/OFF切り替え機能を有している。高画素数一眼レフのカメラについて、キャノンG10、ニコンD700(1210万画素、APS-Cサイズ、ISO6400相当感度)、同じくニコンD90(1210万画素、ISO3200相当感度、ハイビジョン動画機能を備えている)、キャノンEOS500(1510万画素、APS-Cサイズ、ISO3200相当感度、レンズ周辺光量補正機能を有している)、キャノンEOS5D-MarkⅡ(2110万画素、フルサイズC-MOS搭載、ISO6400相当感度、ハイビジョン動画可能、レンズ周辺光量補正可能)そしてソニーα900(2460万画素、フルサイズC-MOS搭載、ISO3200相当感度)、など次々と高級デジタル一眼レフカメラの紹介があった。
パナソニックのルミックスG1は一眼レフカメラ特有のペンタプリズムとクイックリターンミラーが無くなり、ライブビユー・ファインダーに取って代わっている。これでは一眼レフとは言えない。やはり「ファインダーは光学的にピタッと見るのが一番であり、光学ファインダーは大切にした方が良いと思う」とのお話に、我々光学屋は大いに納得できた。続いて興味深いところで、ニコンD3x(2450万画素、フルサイズ)やライカM8の交換レンズなど、高級機の説明がなされた。ライカM8のズミルックスM21mm、f=1.4、このレンズには1g当り銀より高い値段の硝材が使用されている。
またタングステンライト照明での撮影はあずき色を帯びるため、色補正フイルターが必要である。ライカS2はコダックのCCD素子を用いている。富士フイルムのGF670プロフェショナルは6×6と6×7のフイルムサイズが切り替えることができ、フォーカシングには蛇腹を使っているなど、専門家ならでは知りえない話も聞かれた。
市川氏の盛りだくさんな解説に加えて、たいへん熱のこもった話し方に、このたびも聴講者一同大いに満足した次第である。カメラ専門誌の編集長から写真技術研究家として、ますますお元気でご活躍いただけることを切に願って、市川氏に改めて心から厚く御礼を申し上げる次第である。
12.フェルマーの原理からアイコナール方程式、光線方程式へ
光学設計ノーツ12.フェルマーの原理からアイコナール方程式、光線方程式へ
前回、光学設計ノーツ11 において光線を中心としたマリューの定理とフェルマーの原理について触れた。
Maxwell の電磁方程式以前の光学の重要な出発点である。
今回はその続きとして、フェルマーの原理からアイコナール方程式の、そして媒質中で光線が進むべき経路を具体的に定める光線方程式の導出を行なう。
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株式会社タイコ 牛山善太
11.マリューの定理とフェルマーの原理
光学設計ノーツ11.マリューの定理とフェルマーの原理
太古から人間は光を光線と言う象徴を用いて、その性質・挙動を理解し整理してきた。
この様な研究領域を幾何光学と呼ぶ。
そして付随的に幾何光学的波面というものが想定され、これは幾何光学的な光線通過経路計算と、その光線の像面上の到達点における位相差計算・波動光学的な強度分布計算の仲立ちをする非常に重要な概念となる。
光線はこの波面に直交する法線を繋いでいったものと考えられ、これらの光線の集散状況を解析する、収差論的にも重要な意味を持つ。
今回はその幾何光学的波面の持つ基本的な性質と、そこから導き出される光線の進行経路の法則について触れる。
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10.画像処理による歪曲収差補正について
光学設計ノーツ10.画像処理による歪曲収差補正について
1.歪曲収差の補正
画像処理による収差補正技術の内、現状でも十分に実用化されているのが歪曲収差の補正である。
ちょっと順序が入れ替わった感があるが、今回はこの収差補正の画像処理について触れさせていただきたい。
基本的には歪曲収差補正に於いては像点位置の移動、歪んだ倍率の修正が行なわれる訳であるから比較的扱い易いのは明らかである。
高倍率のズームレンズ等では歪曲収差の補正は困難なものであって、そこから逃れられる事は収差補正的に非常に有利である。
また安価な光学系を考える場合にも有益である。
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9.画像処理による点像補正について
光学設計ノーツ9.画像処理による点像補正について
1.点像の補正、その基本的な考え方
画像処理における点像の補正は、一般的には歪曲収差補正の場合とは異なり、画像内で分離された情報を扱う訳では無いので困難が伴う。
画像回復的な意味を持っており、進展が大いに期待される分野であり、またデジタル画像と言うものが歩を進めて行かざるを得ない方向でもあろう。
そこには種々の手法があるがここでは最も基本的な、光学的な範囲から逸脱しないデジタル・フィルタリングの考えかたを示す。
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光ファイバーによる映像信号の伝送 、光ファイバー伝送の特徴
第238回 光交流会オプトフォーラム
講演会:第一部:光ファイバーによる映像信号の伝送
第二部:光ファイバー伝送の特徴
講 師:池田弘明氏 有限会社池田電子工学研究所代表取締役(元静岡大学工学部教授)
この講演会は、2007年11月に光交流会と浜松地区知的クラスターとの交流展示会がご縁で実現したものです。
池田氏は静岡大学工学部在職中に光ファイバーを用いた映像信号の伝送技術のご研究をされていました。本研究は20年ほど前から始められており、当時としては通信技術の先端をいくご研究であったと思われます。
講演は一部「光ファイバーによる映像信号の伝送」と二部「光ファイバー伝送の特徴」で構成され、先ず第一部では、光ファイバー伝送の特徴を次のように述べられた。
○ 比帯域が大きい:100MHz
○ 長距離伝送が可能である。
○ 周波数特性が広く無調整。
○ LEDで容易にアナログデータの伝送が可能。
○ パルスFM変調方式の適用が容易である。
信号発信の光源にLEDを用いた中部電力との共同実験では、その距離を12Kml設定したが充分満足できる結果を得た。試算想定で30Kmまでは可能であると判断している。
テスト結果によりLEDは短距離通信に有利であると言える。また、LEDを用いる場合の特徴として、ファイバーの種類を選ばないこと、少しくらい反射があってもレーザーのようにうるさく問わないといったことがあげられる。
SWFM/PFM変調方式と周波数スペクトルの関係やアナログ映像信号用光伝送システムの基本構成についての詳しい説明があり、まとめとして次のことを述べられた。
○ 映像信号の伝送が容易で劣化がまったくない。
○ 10Km間での距離はケーブル特性を気にしなくても良い。
○ NTSC映像伝送の実験について、LEDでもHDTV伝送が可能である。
○ 汎用性があり、他の応用展開が可能である。
○ アナログ信号をある程度増幅してデジタルに変換して伝送する方がよい。
第二部では主観評価に基づくNTSC映像信号のパルスコード化帯域圧縮方式について、パルスコードの生成についてなどを詳しく述べられた。
画像評価方法として、20人の視覚者が5段階方式で評価する方法がとられている。画像の解像度は前後の画像を加算して2で割ったデータを基準評価値とするなどが述べられ、興味深いところであった。
二部のまとめとして次の説明があった。
○ 産業用の製造データ伝送が用意である。
○ デジタル化しているので伝送途上での映像品質の劣化は全くない。
○ レーザーカッターのカッティングモニターとして実験的に使用できる。
○ LEDを使用しているので、目に対する危険性がない。
SWFM/PFM変調方式と周波数スペクトルの関係やアナログ映像信号用光伝送システムについての内容は余りにも専門的であり、光学業界の者にとってはとても難しい内容であった。
報告者:吉村
8.エッジの結像とその画像処理と光学設計について
光学設計ノーツ8.エッジの結像とその画像処理と光学設計について
一般的なマシンビジョンにおいて、あるいはデジタル画像のエッジの補正において、物点とこれに対応する点像の位置の対応が正確に認知出来ることは重要なことであり、意外と困難が付きまとう。
単純な点像の位置ズレである歪曲収差の影響を除いたとしても、収差により、ある程度の大きさの広がりを持ってしまう点像のどこが、正しい結像の位置を示しているのかを知る事は、簡単なことではない。
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7.デジタル光学機器のサンプリング画像について
光学設計ノーツ7.デジタル光学機器のサンプリング画像について
1.はじめに
今回からは、趣向を大きく変えて現在の光学機器を考える上で中心的な撮像システムと言ってよい、CCD,CMOS 等によるデジタル画像システムについて検討させていただく。
こうした素子は、フィルムなどに比べ、より受光部の構造性が顕著であり、それが出力値に大きな影響をもたらす。
こうした受光ディバイスとしての重要性が増している撮像素子により得られるサンプリング画像とレンズ等による古典的な光学系による結像との関係について主に検討する。
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